秋たけなわ、また秋は学会のシーズンでもあります。私は9月に「日本自殺予防学会」(https://www.mcmuse.co.jp/jasp2024/)、10月に「日本マインドフルネス学会」(https://mindfulness.smoosy.atlas.jp/ja/JAM11)へ参加しました。どちらも久々の対面の参加でした。少し遅くなりましたが、まずは「日本自殺予防学会」について報告したいと思います。
私が初めてこの学会に参加したのは2008年の岩手大会で、現理事長の張賢徳(ちょう・よしのり)先生からグリーフケアについて講演の依頼を受けたのがきっかけでした。以来16年、ずっと本学会に参加しているのは、グリーフ・カウンセラーとして「自殺」は重要テーマであり精神的に追い込まれた人たちの水際での救済について臨床現場での情報を得ることは極めて貴重なのです。
今回自殺予防学会は、日本臨床死生学会*との合同開催でした。自殺予防プロパーの重要テーマとしては、1)コロナ禍で増えた児童の自殺予防、2) がん患者の自殺予防(精神腫瘍科の現場から) 3)自殺企図の再発予防(自殺未遂患者のケア)4)自死遺族の抱える問題(精神科・法律上のフォロー)などでした。さらに今回日本臨床死生学会との合同テーマとして、死生学プロパーのテーマ『安楽死・医師自殺幇助』が挙げられ興味深く聴講しました。
日本はもとより一部の国を除いて『医師自殺幇助』は法律で禁じられています。しかしALS、パーキンソン病、アルツハイマー病など、進行性変形疾患を負う患者が、心身の苦痛が耐えがたく、生への喜びや希望も一切失い、命を絶つことを切望したとしたら、医師として家族として、善意ある人として、どう判断したら良いか、真剣に悩む問題ではないでしょうか? ベルギー・オランダ・米国(一部の州)ではこうした患者の自由意志と人間的尊厳を尊重して、『自殺幇助』が合法化しています。
さて、本テーマのシンポジストの一人、児玉真美さんは、娘さん(30代)が重度の障害を抱え、寝たきりで全介助を要します。そうした子を持つ親として児玉さんは、患者の自由意志を重視するあまりに、自殺が権利であるかのように主張し、安楽死の合法化を急ぐ傾向に警鐘を発します。「もっと考えるべき要素が他にもあるのではないか?」と。患者の死にたい気持ちへの洞察、介護家族の深い思いなど、とことん考慮した上で安楽死を語るべきであると唱えます。
娘さんの介護に日々携わる児玉さんならではの、貴重な指摘に心を打たれました。
*日本臨床死生学会は、「死について中立的・学祭的に考える会と言えます。特に議題として末期患者など自分の死と向き合う人のケア〜ホスピスケアについての問題はこの学会の重要テーマです。