東日本大震災被災者の皆様へのメッセージ

東日本大震災から2年が過ぎて

震災から2年の月日が過ぎました。最愛の人を失い、大切な家や仕事、そして住み慣れた町まで失った方々の心の痛み、生活上の苦難を思うとき、いたたまれない気持ちになります。懸命に立ち直ろうと努力をしている姿には深い尊敬の念を覚えますが、心の痛みは決して消え去ることはないでしょう。GCC一同、微力ながらカウンセリングを通して被災した方々に寄り添い、その苦しみを少しでも軽減できればと願ってきました。今後もそうした支援を続けていきたいと願っています。ひとり一人に秘められたレジリエンス(復元力)を信じて。

東日本大震災・お見舞いメッセージ海外より届く

GCCが師と仰ぐ、グリーフ・ケアの世界的第一人者である、ロバート・ニーメヤー教授より、この度の震災により多大な痛手を受けた被災者の方々に向けてお見舞いの言葉と「トラウマとグリーフ・ケア」のアドバイスが送られてきました。支援者の方々の一助になると信じます。

大震災に遭遇した日本の皆さんへ:トラウマ的喪失にどう向き合うか

ロバート A. ニーメヤー

 2011年3月27日

 

drn 人の世は移ろいやすく,人の命は有限であると知りつつも、誰かと愛着の絆で結ばれて生きようとするのが人の定めです。今の生活がずっと続くことを願い、不測の事態やコントロール外のことなど起こらないようにと願いながら皆生きているのです。そんな私たちの願いがにわかに虚しくされることがあります。自分やかけがえのない人が重い病に倒れる、大切な人間関係や仕事を喪う、しかも突然に。そんなとき「そうか、永遠に保障されたものなんか何もないのだ」と痛く思い知らされるのです。

さて、この度日本を突然に襲った大災害は、皆さんに想像を絶するトラウマと悲劇をもたらし、信じていたことが何もかも覆される瞬間であったとお察しします。まさに悲劇としか言いようがありませんが、しかし、この一大悲劇が私たちに人生の教訓を知らしめるともいえるのです。「人生とは変化の連続、有為転変なのだ」「予測もコントロールも、そんなもの幻想なんだ」という教訓を。

だとするなら、豹変してしまった世界で、人生最大の喪失に打ちのめされつつもそれに抗して生きて行く術(すべ)など何かあるのでしょうか? 私は死別の苦しみを負って、必死で再起・再生を図ろうとする数多くの方々を支援してきましたが、その経験から皆さんにいくつかのアドバイスをしたいと思います。ただし、その術を見出すのは他ならぬ皆さん自身なのであり、それは一人ひとりの心の中に秘められているのです。また、皆さんの苦しみを理解し、共感してくれる信頼できる人たちと話すこと、有意義な対話のできる相手と話すことから生まれてくるものです。以下、私からのアドバイスです。

1)荒れ狂う嵐からちょっとだけ逃れて、あえてリスパイト(小休止)を求めてください。最愛の人を喪ったことでグリーフ(悲嘆)の真っただ中にいるとしても、一瞬でも安堵することは大切です。友人とお茶をする、つかのまの瞑想にふけるなど、なんでも良いので現実の過酷さを和らげてくれることを試みてください。気がかりでどうしようもない気持をちょっと脇において、心を静め、平安を得る術をぜひ見つけてください。

2)どんなに些細なことでも何かひとつ行動に移して下さい。自分や家族の安全確保のために動いてみる、そんな行動は混沌の世界に秩序をつけることになります。自分と同じように被災して打ちひしがれている誰かのためにもなるかもしれないのです。あなたの慈愛や親切な行いによって、他の人までが「この世界にはまだ愛がある」ということに気付くでしょうから。誰かのために役立つことは、他ならぬあなた自身の魂の救済なのです。

3)感謝の思いを表してはどうでしょうか。何かひとつでも良いことを探すのです。悲劇の暗雲にさえ微かな光が射すことがあります。苦しみにあって人の親切が身にしみたということがありませんか? そんな時、「あの人にどうお礼をしたら良いだろうか」とか「ほんとうに大切な人って誰なのだろうか」と自問自答するかもしれません。そして礼状を書く、電話をする、ささやかな贈物を用意する、こんなことを週に3回も実行したら、「こんな辛いときにも、人の善意がまだ残っていた」とこの世を見直すことでしょう。

4)この喪失体験の意味、生きることの「意味」を探ってみることです。あなたの人生観や人生哲学では、この喪失を許容できるのか、たとえ完全にはできないにしても、なんとか喪失と折り合いをつけられるのかと反芻してみることです。受難に遭遇し、自分の信条は脆くも揺らいでしまったのか、逆に益々深まったのか、多少の修正が必要なのか、それは人により様々でしょう。

しかし大切なことは、今かみしめている痛みに何かひとつ肯定的な意味を見出すことなのです。その意味は個人レベルで、また家族や広く地域レベルで考えられることかもしれません。もしこの喪失になにか肯定的な意味づけが可能になれば、喪失をいさぎよく、尊厳をもって受け入れるようになるのです。

5)この被災経験を転機ととらえて、歓迎できない変化から何かを学ぶために変化を「センセイ」として迎え入れてください。この大災害が人の生死について一体何を私たちに教えようとしているのでしょうか。

移ろいやすい世にあって、ほんのつかの間かもしれませんが、人を愛おしみ、今いる場所を愛し、未来への抱負を大切にし、そして手中にある物に感謝するなら、そして世をすねることも苦々しく思うこともせず、欲にくらむこともなく生きていくことを、今こそ考えるときなのではないでしょうか。喪失からの学びを生かせるなら、真の「叡智」に向かって、大きな第一歩を踏み出すことになると私は確信しています。

(翻訳 鈴木剛子)

「本資料の許可なき転載、転用はご遠慮ください。尚、引用に際しては、本資料の出典を明記願います」

 

ロバート・A. ニーメヤー教授(Dr. Robert A. Neimeyer)略歴

米国メンフィス大学心理学部長。死、グリーフ、喪失、自殺への介入について広範囲な研究を修めてきた。臨床家、雑誌『Death Studies』の主宰者、ワークショップの講演者としても国際的に活躍している。日本の学会にも招かれ過去2回来日。
To my Japanese friends who are suffering from the West Japan Disaster: How to cope with the traumatic loss.
(Robert A. Neimeyer, University of Memphis, Department of Psychology March 27, 2011)

 

“We are wired for attachment in a world of impermanence. As much as we yearn for stability, predictability and control of our lives, we often find these taken from us. Sometimes this occurs with the news of our own serious illness or that of someone we love; sometimes it comes with the loss of a relationship or a valued role; and sometimes it happens with traumatic and devastating suddenness and with the magnitude of the tragic events unfolding in Japan in recent weeks. In one form or another we then learn the lessons of loss: that life is change, predictability is fleeting, and total control is an illusion. How then can we live in this world transformed by sometimes traumatic loss? Here are a few ideas, but the most genuine answers arise in our own hearts, and in deep conversation with those we trust and who understand what we have suffered.

First, find respite from the storm. Allow yourself, where possible, to take momentary refuge from the circumstances that bring you grief. Perhaps this will take the form of a simple ritual, such as having a quiet tea with a friend, or be found in a moment of mindful meditation during a difficult day. “Dose” yourself with the hard reality of the situation, knowing that it demands attention, but not constant attention. Find ways of growing still, and seeking inner peace.

Second, take action. Perhaps there is something, however small, that you can do to solve the problems brought by the loss. This might be for yourself and your immediate family, as you seek to restore some sense of security in an insecure world. Or this might be for another–even a stranger–who has also suffered, in a random act of unexpected kindness that helps them understand that the world still contains love. You will both benefit from it.

Third, express gratitude. Search for the blessings, the silver lining in the dark clouds of tragedy. Has someone extended to you an act of kindness in your suffering, and how might you acknowledge it? Who matters to you, and how can you thank them–perhaps in a note, a call, a small symbolic gift–for touching your life? Disciplining ourselves to do this three times per week reminds us that goodness exists all around us, even in hard times.

Fourth, seek meaning. What personal life philosophies help you understand and adapt to these losses, and how are these core beliefs tested and deepened by what you have suffered? What affirmative meaning could emerge from your present pain, at the level of your own life, that of your family, or the larger community? Seeking some way to make sense of the loss can help us bear it with grace.

And fifth, embrace unwelcome change as a teacher, a sensei, in times of transition. What does this unexpected transition teach us about the nature of human life? And how can we learn to live with impermanence without cynicism or bitterness or greed, embracing the people, places, projects and possessions we now have, for this short time? In learning the lessons of loss in a constructive way, we move closer to wisdom.”

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